お久しぶりです、みんなの後輩バーチーです。
これから書かれるお話は先日私の身に起きた出来事です。
普通に生活していたら中々経験する事はありません。
でも世の中には「事実は小説より奇なり」ということがあるんです。
あれ?ここはどこだ
いったい何が起こった?
ほんの数分前まで風呂上りのビールを飲んでいたというのに
なぜ草原の真ん中に?
わからない
このまま考えていてもしょうがない
あてもなく歩き始めた…
歩いても歩いても変わらない景色、何時間歩いたかもわからない
体力も限界を迎えようとしていた
「のどが渇いた…」
草原に倒れこむ
わけがわからないまま死ぬのか?
空を見上げあきらめの感情が支配しかけたその時、草を踏み分ける足音が聞こえてきた
「そんなところに寝っころがってどうしたんだい?」
声のするほうに顔を向けると1人の男が立っていた
草原には似つかわしくないこざっぱりとした身なりをしている
「み、水!のどが渇いて死にそうだ」
「水は無いけどこれを飲みな」
そういって飲み物を差し出してきた
「ありがてえ!」
ゴクゴク…あっという間に飲み干した
「あれ、これってお酒?」
「ああ、そうだよ僕バーテンダーなんだ、ところで君は?」
・・・彼から聞いた話をまとめるとこうだ
どうやら俺は異世界に飛ばされてきたらしい
ここはコウトウ国という国で、さっき飲み物をくれた彼はそこの町の酒場でバーテンダーをやっているらしい そのかたわら、冒険者ギルドに登録していてそちらの仕事もあるとか
「この世界のこと何もわからないんだろ。俺たちの仲間に入らないか?」
そういって彼は町の冒険者ギルドへ案内してくれた
「ようこそ!これが冒険者仲間のメシトモギルドだ」
「ところで何で俺を仲間に?」
「実はこの国には古い言い伝えがあってね。別の世界から来た勇者がこの国の危機を救うという話なんだ」
「実は今この国に危機が訪れていてね」
「魔物が国を荒らしているんだ」
「一緒に戦ってほしい」
「最恐の魔物“火の国の肉魔人”を倒してくれないか」
ははーん、見えたぞ このパターンね
異世界転生ものにありがちなパターンね
転生されたらなぜかチートなステータスを持っていて無双するパターンね
はいはい、任せておきなさい
「(勇者にふさわしい)武器はあるかな?」
というわけで町にある武器屋へ
「ドーゾノ武器店・・・ここか」
「この店で1番いい武器をくれ」
「じゃあ、これだな」
ん?
(トング??)
「こ、これは?」
「鉄のトングだよ」
(トングって言っちゃったよ)
「“火の国の肉魔人”と戦うんだろ?火に強い武器といったらこれだね」
(普通剣とかじゃないのか?)「あ、ありがとう…」
まあ、なんたって俺は伝説の勇者だからな、これでも大丈夫だろ
「おーい、西の方で“火の国の肉魔人”が出たぞー!」
「よし!いっちょうやってやりますか!」
「お、おいバーチーいきなりで大丈夫か?」
「任せておけよ!」
町の西はずれ、遠くから異様な気配が近づいてくるのがわかる
「こ、こんな魔力を感じるのは初めてだ!」
「私たちのレベルでかなう相手とは思えない!」
「ざわつくんじゃねえ!俺に任しておけ!」
いよいよ魔人が姿を現した
直感でわかる、こいつはやべえ!
狂気の笑みを浮かべながら相手を切り刻むタイプだ!
だが、俺たちだって勇者一行だ!
「全員で攻撃だ!」
バシッ!!
グエッ!!
バーテンのアキがやられた
バシッ!!
グエッ!!
ドラマーのタキがやられた
「よくも仲間を!」
バシッ!!
グエッ!!
勇者バーチーがやられた
「グハハハハ!雑魚にもほどがあるな!殺す価値もない!」
完敗だ…
「と、とにかく傷ついた者たちの回復を!」
仲間の魔法使い達が癒しの魔法をかける
「どうしたらあんなやつに勝てるんだ!」
「どうやったらレベルを上げられるんだ?」
魔物を倒してその肉を食べる事。それがこの世界のレベルの上げ方らしい
「このあたりで強い魔物はいるか?」
「ミノタウロスだな、牛の魔物だ」
それからは来る日も来る日もミノタウロスを倒しその肉を食らい続けた
ミノタウロスのタン(舌)
ミノタウロスのチャックアイ(肩)
ミノタウロスの・・・
季節が変わる頃、気付けば自分たちのレベルが大幅に上がっていた
「よし、これならやれるぞ!」
・・・ついにその時がやってきた
「おーい、東の方で“火の国の肉魔人”が出たぞー!」
「みんな!いくぞ!」
「でたな!肉魔人!」
相変わらず狂気を感じさせる構え・・
「性懲りもなく来たのか、無駄なことを」
「前の俺たちとは違うぜ!行くぞ!」
バシッ!
スッスーがホットサンドメーカーで攻撃
ズンッ!
キノッチが背後から攻撃
バシッ!
反撃を食らった
ポーションで回復
バシッ!
タキがドラムスティックで攻撃
(タキも若干狂気の表情だな)
バシッ!
反撃を食らった
ダメージが大きい
ハイポーションで回復
相手がひるんだ、ここで勇者バーチーの最後の攻撃
「アバンストラッシュ!!」
グエーーッ!!
肉魔人の体から黒い影が出てきて苦しみながら消えていった・・・
「あれ、ここは…」
そう、肉魔人の正体は魔物に体を操られていた肉侍だったのだ
「ありがとう!お礼に極上の肉をご馳走しましょう!」
宴は始まった
「では、これから口の中で溶ける肉を体験してもらいましょう」
「A5ランクのミノタウロスです」
「肉は飲み物です」
「なにこれ!本当に溶ける!」
「うますぎる!」
「肉侍最高!」
(みんな大げさだな)
「肉が溶けるなんて事あるわけが…」
「ほんまや!」
最高の肉、最高の酒、最高の仲間
そこには最高の時間が流れていた
この世界も悪くないな
そんな風に思っていた…
ふと手を見ると向こう側が透けて見える
「おい!バーチー!」
「どうしたんだ、だんだん見えなく!」
「バーチー!行かないで!」
・・・気付くとそこはどうやら見慣れた自宅のベッドのようだ
「夢だったのか?」
ふとベッドの横を見ると何かが落ちている
「ふっ、またいつか焼く日が来るのかな…」
~Fin~
※この物語は一部フィクションです。
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