お久しぶりです、みんなの後輩バーチーです。
今回はいつもの脱線ブログではございません。
小説です。小説家デビューです。
と言っても完全なオリジナルではなく西野亮廣さんの絵本の次回作である「夢幻鉄道」の二次創作の短編小説となります。
オンラインサロン内ではプロットなども公開されています。
それでは早速、処女作の公開です。
『夢幻鉄道 ~時を超える想い~』
芝居小屋では今日も様々な演目が上演されている。
今、舞台では燕尾服に古びた帽子を被った男がスポットライトを浴びている。
「それでは最後の演目です。ほんの少しの奇跡をあなたに……」
そう言うと男の体かステージからほんの少し浮き上がる。
ハッと息をのむ観客達。
次の瞬間、一気にステージの上方へ。
観客達も息を飲んだまま目線だけを上に。
客席を見下ろしながら男が語り出す。
「それではまた次の夢でお会いしましょう」
その瞬間、男の姿が消え歓声がテント内にこだまする。
幕が下りてもなかなか拍手は鳴りやまなかった。
「師匠お疲れ様です!」
舞台袖に戻ってきた男に私は声を掛ける。
「おう、チー坊お疲れ様、今日もまあまあの出来だったな。」
そう言いながらも嬉しそう。
帽子を脱いでほっとした表情を見せている。
この男こそが稀代の奇術師「Dr.マジック」その人である。
実はこのDr.マジックはある意味インチキマジシャンなのである。
マジック、そう手品には種と仕掛けがあり、それを悟らせないための高い技術が必要不可欠であるのはご存知の通り。
ところが、この師匠の披露する演目には種も仕掛けも、そして技術もないのだ。
実はこの男、ただの超能力者なのだ。
さっきステージ上で浮いていたのも、目に見えないワイヤーや鏡のトリックなんて使っていない、ただ浮いているだけ。
他にも瞬間移動でも替え玉を使うわけでもないし、ナイフはただ刺さらないだけ。
一切の仕掛けが必要ない究極の省エネマジックなのである。
まあ、弟子としてはそういう仕掛けの準備が必要ないから楽ではあるんだけどね。
え?本物の超能力者ならそれで何かできるんじゃないかって?
それは本当に甘い考えだよ!
今のこの世界に「本物の超能力者」は必要とされていないんだよ。
え?なんでそんなことがわかるかって?
それはもちろん弟子の私も超能力者だからだよ。
私も「超魔術師バーチー」としてやってるんだけどね。
本当に種も仕掛けも無いのに胡散臭いと思われてるみたいだ、やんなっちゃうよね。
まあでも超能力なんてあってもトラブルの元だからね。
それで師匠も「Dr.マジック」なんて名乗ってるわけさ。
ちなみに自分が使えるのは、空中浮遊、物を浮かせる、瞬間移動、予言、金属を伸ばす‥まあ他にも色々。
ただ、どうしても師匠に出来て自分に出来ない技があるんだ。
「時間移動」
これだけは出来ないんだよね。
もちろん師匠にも教えてもらえないか何度もお願いしてみたんだ。
だけど師匠は決まってこう言うんだ。
「超えてはいけないものもあるんだよ」
そんな時、師匠は怖いような悲しいような顔をしているからそれ以上は聞けないんだ。
それでも超能力者、超魔術師の性(さが)なのかどうしても知りたかったんだ。
「時間移動」
その究極ともいうべき技を。
そんなある時、ある噂を耳にしたんだ。
商売柄そういった不思議な話は集まって来るんだ。
人の夢の中に入れる夢幻鉄道というものがある、と。
本当はいけないことなのかもしれない。
人の夢に入ってその人の奥を覗いてしまうなんて。
でも、どうしても師匠の夢に入ってみたくなってしまったんだ。
なぜ「時間移動」をしてはいけないのか。
師匠に何があったのか。
それからは、暇を見つけては夢幻鉄道について調べて回った。
夢幻鉄道に乗ったという人の話を聞いたり、夢幻鉄道に乗った場所の噂を聞いて訪ねたり。
何の成果もなく、いつしか夢幻鉄道の事も忘れかけた頃。
それは次の興行先に向けて移動中、とあるサービスエリアに立ち寄った時の事だった。
「ちょっとトイレ行ってコーヒー買ってきます。師匠はどうします?」
「もうちょっと寝てるわ」
そういってシートを倒す。
(この先渋滞してなきゃいいけどな)
そんなことを考えながらトイレから出てきて売店へ向かおうとした時、何かが落ちているのを見つけた。
切符?なんでこんなところに?
なぜか気になって拾ってみると、そこにはこんな文字が。
夢幻鉄道
(え!これって!)
次の瞬間強烈な光を感じ思わず目をつぶってしまった。
恐る恐る目を開けるとそこには‥
駅?
もしかしてこれが夢幻鉄道
吸い込まれるように電車に乗った。
乗客は自分だけ。
現実感が無いまま電車は進んでいく。
「次は終点、終点です」
とりあえず電車を降りる。
乗った場所と同じような無人駅から出てみると、さびれた田舎町のようだ。
ロータリーと呼んでいいかわからない駅前のスペースには車もない。
ふと先を見ると喫茶店が目に入ったのでとりあえず入ってみることにした。
カランコロン♪
最近では珍しいベルが鳴った。
「いらっしゃい」
そう言った店主の顔を見て固まってしまった。
師匠だ。
今と違って髪の毛が黒くてふさふさだ。
しわもない。
そういえば師匠は昔、喫茶店のオーナーだったと聞いたことがある。
お客さんに手品(本当は超能力)を見せていたらそっちが評判になって喫茶店もやめたって言ってたっけ。
ということは、もしかして今自分がいるのは師匠の夢の中ってことか!
「何にします?」
私は思い切ってこう言ってみた。
「コーヒーと時間移動」
目を見開く若かりし頃の師匠。
「ほう、珍しいお客さんだね」
まあコーヒーでも、と言ってカップが差し出された。
「それで、時間移動だったね。他にお客さんもいないし良いかな。」
(あ、夢の中なら超えられるんだ)
いよいよ念願の時間移動だ。
そして超えるべきではないと師匠が封印した理由がわかるかもしれない。
興奮を抑えながらその瞬間を待つ。
「それじゃあ、3分前に跳んでみよう」
そう言ったかと思うと、一瞬吸い込まれるような感覚が。
しかし目を開けると、そこはさっきまでと変わらない喫茶店の店内。
「何にします?」
ん?あれ?
「コーヒーと時間移動」
目を見開く若かりし頃の師匠。
「ほう、珍しいお客さんだね」
まあコーヒーでも、と言ってカップが差し出された。
「それで、時間移動だったね。他にお客さんもいないし良いかな。」
ん?あれ?
「それじゃあ、3分前に跳んでみよう」
そう言ったかと思うと、一瞬吸い込まれるような感覚が。
しかし目を開けると、そこはさっきまでと変わらない喫茶店の店内。
「何にします?」
ん?あれ?
「コーヒーと時間移動」
目を見開く若かりし頃の師匠。
「ほう、珍しいお客さんだね」
まあコーヒーでも、と言ってカップが差し出された。
「それで、時間移動だったね。他にお客さんもいないし良いかな。」
ん?あれ?
「それじゃあ、3分前に跳んでみよう」
そう言ったかと思うと、一瞬吸い込まれるような感覚が。
しかし目を開けると、そこはさっきまでと変わらない喫茶店の店内。
ちょ、ちょっと待って!
何これ!
夢幻鉄道ってこんなだっけ?
慌ててポケットの中の切符を見てみると、そこにはこんな文字が。
無限鉄道
ちょいちょーい!
夢幻鉄道ちゃうんかーい!
夢の中でただ無限にループするだけなんかーい!
いや、ちゃうやん!ここからドラマが始まるやん!
時を超えても結ばれない恋の話が展開されたりするはずやん!
もしくは何回時を超えても助けられなかった後悔の話が語られるはずやん!
それが夢幻鉄道やん!
なんやねん!無限鉄道って!
千葉県生まれ千葉県育ちなのに関西弁になってしもうたやないかーい!
はぁはぁ‥‥
「何にします?」
「コーヒー下さい」
コーヒーを飲んだ後、喫茶店を出ようと扉を開けた。
カランコロン♪
気付くとそこはサービスエリアのトイレの前だった。
売店でコーヒーを買って車へ戻る。
師匠も起きていた。
「師匠、コーヒーです。」
「おう、ありがとう。」
車を出して高速へ戻る。
心配していた渋滞も無い様で順調に流れている。
「チー坊、ずいぶん遅かったけど‥
もしかして夢でも見てたのかい?」
どうやら師匠にはまだまだ敵わない様だ。
次の街へ向けてアクセルを強く踏み込んだ。
ーFinー
『夢幻鉄道』作詞作曲:西野亮廣(Cover by HighT)[カラオケ音源]
長々とお付き合いありがとうございました。
今日の学び
・ストーリを考えるのはブログ書くよりはるかに大変
・最後にハイトさんの歌を持ってくればなんとかなる
それではまた次のブログでお会いしましょう!